初任給40万円以上の時代 ‐ ベテラン・中堅社員とのアンバランス
「初任給40万円」
最近、このようなニュースが世間を賑わせています。優秀な若手人材を確保するために、数多の企業が相次いで初任給を引き上げる動き。これを見て、焦りや危機感を覚えない経営者や人事の方は、いないはずです。
<参考> 大卒社員の初任給
59万1675円(GMOインターネットグループ株式会社)
50万円(アイ・システム株式会社)
42万5000円(シンプレクス・ホールディングス株式会社)
41万6666円(オーロラ・エナジー・リサーチ株式会社)
41万3000円(株式会社東京日商エステム)
43万4,000円(LINEヤフー株式会社:技術職)
43万~40万円(サイボウズ株式会社)
42万5,000円(株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント)
42万円(株式会社サイバーエージェント)
静かに疲弊していく、管理職・中堅社員の存在
しかし、私がビジネスの現場で多くの声を聞く中で、本当に深刻だと感じるのは「新入社員の給与」そのものではありません。
その影で、静かに疲弊していく管理職・中堅社員の存在です。
管理職や、ベテラン・中堅社員の方々は、過酷な就職難を勝ち抜き、手厚い教育も受けられないまま「背中を見て覚えろ」「気合と根性で乗り切れ」という昭和の残り香が漂う環境で、泥臭くスキルを磨いてきた世代です。
自分の初任給とは比較にならない高待遇で入ってくる若手への複雑な感情や、任される役割への負荷が、いま、現場の大きな課題になっています。
「自身がプレーヤーとして成果を出しつつ、若手のエンパワーメントも求められるが、やり方がわからない…。」
「自分たちの時は、もっと厳しかった」
「今の若手は、恵まれすぎているのではないか」
「頑張っても、頑張っても、報われない。これ以上やる意味はあるのか」
私がここで警鐘を鳴らしたいのは、これが単なる個人の「不満」レベルに留まらないという点です。この歪みを放置することは、経営において致命的なリスクを招きます。こうした状況を、単なる「年長者のひがみ」として切り捨てたり、放置してはいけません。
ビジネス現場の歪みを放置することの、経営リスク
単なる「感情論」ではなく、「組織崩壊」に繋がるリスクだという理由は、次の3つです。
1.「静かな離職」による生産性の低下
「頑張っても報われない」と悟ったベテランが、最低限の仕事しかこなさない状態に陥ります。組織の「知の源泉」である彼らの意欲減退は、目に見えないスピードで利益を蝕みます。
2.インシビリティ(Incivility)- 敬意や思いやりが欠如した組織
心に余裕を失ったベテラン・中堅層は、無意識のうちに若手に対して「必要以上に丁寧な指導をしない」など、相手に対する敬意や思いやりを欠けた言動をおこなう可能性があります。明確な悪意や攻撃性はないものの、軽い皮肉や、話を遮るなど、「ハラスメントグレーゾーン」な行動の積み重ねは、職場の心理的安全性を低下させます。その結果、せっかく高待遇で迎えた若手の早期離職を招く、という皮肉なループが生まれます。
3.「不機嫌な職場」がハラスメントに発展する危険性
昭和の価値観のまま、やり場のないストレスを抱えた管理職の言動は、今の時代、容易にハラスメントと認定されます。法的リスクだけでなく、企業のレピュテーション(評判)を一瞬で失墜させる爆弾を抱えているのと同じです。
今、向き合うべき組織の課題
今の歪みを「個人の資質の問題」で片付けてはいけません。
「過去の苦労」を正当にねぎらい、彼らの経験を「新しい仕組み」の中にどう再配置するか?
感情のケアを含め、「仕組み化」することこそが、
今、組織のリーダーに求められている、業績向上に向けた最善の施策ではないでしょうか。
これは「給料を上げれば解決する」という単純な話ではありません。
仕組みが変わらないまま待遇だけを変えても、組織のバランスはさらに崩れていくでしょう。
「個人の努力」から「働きがいの仕組み化」へ
では、これからも成長しつづけるためには、何をすべきなのでしょうか?
私が提唱しているのは、「ウェルビーイング・マネジメント」による組織の再設計です。
これは単に「社員を優しく扱う」ことではありません。
エンゲージメントの科学
社員の「やる気」を個人の資質に頼るのではなく、自然と貢献したくなるような環境をロジカルに設計します。
インシビリティの排除
ハラスメント防止のみにとどまらない企業づくり。
組織を腐敗させる「無礼な振る舞い」を、ルールと文化の両面から徹底して防ぎます。
経営理念の体系化
組織の存在意義である、パーパスを明確にし、ミッション、ビジョン、バリューといった経営理念を体系化したうえで、ストーリーテリングを通じた、魅力的な物語として社員に浸透します。
目標管理制度・報酬制度との繋ぎ込み
体系化された経営理念と目標管理制度を連動させます。
インテグリティを土台とした評価
数字さえ上げれば何をやってもいい時代は終わりました。
企業の誠実さが、優秀な人材を引きつける最大のブランドになります。
これらを「仕組み」として導入することで、管理職は「どう指導すればいいか」という迷いから解放され、本来の創造的なマネジメントに集中できるようになります。
変革は、経営者の「決意」から始まる
いまの組織文化・戦略を否定する必要はありません。
その熱量を、今の時代に合った「仕組み」へと変換すればいいのです。
給与や報酬を上げることは一つの手段に過ぎません。
本当に大切なのは、「ここで働いていることに誇りを持てる」という、目に見えないインフラを整えることです。
もし、貴社の現場で「管理職が疲れ切っている」「新しい文化への移行がうまくいかない」という兆候があるのなら、それは組織をアップデートすべき重要なサインかもしれません。
次の一歩:組織の「現在地」を診断しませんか?
現在の貴社の社内文化が、どの程度グローバル基準に適合し、社員のエンゲージメントを引き出せているか。一度客観的な視点で整理してみることをお勧めします。
組織の再構築や、次世代リーダーの育成についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。現場のリアルを知る専門家として、貴社に最適な「変革のロードマップ」を共に描きます。
▶ まずはあなたの「組織に関する悩み」を診断してみませんか?
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